追加調査について
追加調査とは、高知ユニットセンター独自の計画・予算で、追加調査への参加について同意をいただいた方を対象に、実施する調査です。事前に環境省の承認を受けて実施します。
解析が終了したのち、皆様にはエコチル調査報告書や学術論文を通じて還元させて頂きます。
実施中の追加調査
111「アレルギー疾患・アレルゲン感作と腸内細菌の関連に関する研究」
アレルギー疾患を持つお子さんが急激に増えており、私たちの生活の変化がその増加に関係していると言われています。しかし、その関係はいまだはっきり分かっていません。
最近の研究で、アレルギーには腸のなかにいる細菌群(腸内フローラ)のバランスが関係していることが分かってきました。
そこで、エコチル調査ユニットセンターがある、高知大学(高知ユニットセンター)、富山大学(富山ユニットセンター)、千葉大学(千葉ユニットセンター)、兵庫医科大学(兵庫ユニットセンター)、東北大学(宮城ユニットセンター)の研究グループで、腸内フローラのバランスがアレルギーとどのように関わっているかを調べています。
131「アレルギー疾患・アレルゲン感作とHelicobacter pylori 感染の関連に関する研究」
Helicobacter pylori(ヘリコバクターピロリ)は胃がん発生の促進因子であり、感染時期は小児期と言われています。しかし、現状は若年者ピロリ感染に対する明確な診療指針はなく、その根拠となる小児期の感染状況についてもいくつかの都道府県で報告されていますが、そのエビデンスレベルは高くはありません。また、感染率には食生活など風習の異なる地域によって差があると考えられ、いまだ、高知県ではその報告はされていません。
一方、アレルギー疾患は近年著しく増加しており、医学的のみならず社会的にも大きな課題となっています。急激な増加の理由はライフスタイルの近代化や衛生仮説と関連していると推察されていますが、その機序は明らかにはなっていません。
そこで、本研究では、日本における小児期のピロリ感染について高知県での状況と、Helicobacter pylori感染とアレルギー疾患の発症の関係を調べています。
高知ユニットセンター学童期検査(血液・尿検査)による研究
167「学童期検査における生活習慣病マーカーの血液検査による前方視的な探索的研究」168「小児慢性腎臓病のスクリーニングに向けた背景因子とバイオマーカーの探索」
169「セービン株由来不活化ポリオワクチンを含む四種混合ワクチンの長期免疫原性に関する研究」
私たちの健康は、身体と心の状態、体質といった遺伝的要因、生活習慣、社会経済状態、生活環境に含まれる化学物質等の様々な影響を受けています。それにより、肥満、生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症等)、それらによって引き起こされる動脈硬化疾患、慢性腎臓病等の病気が引き起こされます。これらの病気は、子どものころからの予防が大切です。また、子どものころは感染症にもかかりやすい時期で、その予防も子どもの健康管理のために重要となっています。生活習慣病の評価に使われる血液検査項目(肝機能、血中脂質、糖代謝、腎機能等)と、妊娠前、お子さまがお腹の中にいるとき、赤ちゃんの時から現在までの、お住まいや食生活、運動などのいろいろな環境がどのように関連があるのか、まだ分かっていないことがたくさんあります。
そこで、本研究ではエコチル調査にて収集した妊娠期からの様々な情報と、お子さまの血液検査値・血圧値・腹囲・頭囲との関連性を、様々な角度から調べています。また、エコチル調査のリクルート時期がポリオワクチンの変更時期と重なることから、ジフテリア菌、破傷風菌、百日咳菌、ポリオウイルス1型~3型の予防状況についても調べています。
170「閉経前女性の骨密度低下および妊娠・授乳関連骨粗鬆症のリスク因子に関する検討」
妊娠中や産後、あるいは母乳を与えたお母さまに、骨粗鬆症が発症することがありますが、比較的まれであるため見逃されることも多いと言われています。そのリスク因子等については、まだわかっていないことがたくさんあります。
そこで、本研究では、エコチル調査で収集した妊娠期からの情報と学童期検査の際に測定させていただいたお母さまの骨密度との関連性を、様々な角度から調べています。
186「アレルギー性結膜疾患の有病率と環境因子との関連に関する調査」
アレルギー疾患の中でも目の疾患はかゆみや充血を特徴とし、その症状から日常生活や社会生活に支障をきたしますが、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などと違い、いまだ全国的な調査は行われていません。アレルギー疾患は、子どものころから徐々にアレルギーになりやすい体質となり発症していくため、小児、学童期に調べることで、今の生活習慣を見直すことに繋がり、成人後のリスクを軽減することが期待されます。
この研究では、詳細調査にお子さまの涙を一滴頂いて検査を行い、高知県における小児、学童期のアレルギー性結膜疾患の有病率と、その発症に複数の疾患がどのように関わっているかを調べ、暴露因子(環境因子)との関連を明らかにしたいと考えています。
194「筋力及び筋量と循環器・代謝疾患指標との関連」
動脈硬化の予防は学童期から心がける必要がありますが、我が国では学童期に動脈硬化の徴候を把握する機会はほとんどありません。海外の報告では小児の筋力や骨格筋量が優れるほど動脈硬化の危険因子である血圧や糖代謝、脂質代謝は良いとされておりますが、日本小児での関連にまだまだ不明な点が多くあります。
本研究では、握力及び骨格筋量と血圧及び血中のHbA1c(糖化ヘモグロビン:糖尿病を判断する重要な数値)、コレステロールとの関連を解析し、筋力及び筋量と血中の動脈硬化の危険因子並びにその異常と関連するか明らかにすることと、また筋力及び筋量と動脈硬化の危険因子との関連に対する肥満の交絡について明らかにします。これにより、学童期における生活習慣改善の機会を新たに提供することや、動脈硬化予防・改善を目的とした運動処方プログラムの選択肢を増やすことを目指しています。
参加者募集終了の追加調査
78「アレルギー疾患の防御因子としての母乳栄養-母乳栄養を促す支援のあり方の検討」
母乳には成長に必要な栄養素の他、様々な病気・アレルギーから赤ちゃんを守る免疫物質が含まれています。授乳時にお母さんと触れ合うことで、赤ちゃんの精神的な発達にも影響を与えるとも言われています。母乳育児にはたくさんのメリットがありますが、お母さんと赤ちゃんの状況によっては、母乳で育てることが難しいこともあります。
そこで、妊娠中の母乳育児に関する意識を質問票調査により実施し、出産後の母乳育児とその母親と子どもの環境について検討することとしました。また、乳汁状況と出産後の子どもの感染症やアレルギー疾患との関連も検討しています。
109「M−CHAT及びESSENCE-Q質問票によるASD等神経発達障害早期発見及び環境化学物質・社会的環境要因の発達障害への影響解明」
近年、自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの神経発達障害について関心が高まっています。その原因は、遺伝・環境などが複雑に絡み合っていると言われていますが、まだはっきりとはわかっていません。そこで、2017年3月、こうちエコチル調査参加児のうち1948人を対象に、M-CHATとESSENCE-Qという、国内外で活用されている質問票を使って、お子さまの発達についてアンケート調査を実施し(回収数:1178)エコチルの全国調査でいただいてきた妊娠中の血液や質問票の答えと、追加調査アンケート調査のこの発達のアンケートの結果を比較・分析中です。※1
※1 集計結果の一部といただいたコメントへの回答は、2017年12月発行の「エコチル調査報告書 パパ・ママの気になっていること」をご覧ください。
123「幼小期の睡眠時無呼吸症候群が神経・精神的発達に及ぼす影響について」
小児の睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、情緒・行動面に加え知的側面にも影響を及ぼすことが知られていますが、海外の研究は5歳以上を対象としたものです。子どもの知的・情緒・行動面へのSASの影響と早期介入効果を明らかにできれば、早期治療の必要性を積極的に啓発できると考えました。SASの質問紙は日本ではまだ標準化されたものが無いことから、高知県のエコチル調査に参加にしている2~5歳の小児に①既存の6つのSASの質問紙を和訳した質問紙と、②子供の情緒・行動の発達には「子どもの強さと困難さのアンケート」の質問紙を送付しました。
質問紙は4,132/6,756件(61.2%)回収しており、健常者の1%以下の症状を異常とすると、SASの25の質問項目のうち15の質問項目において、少なくとも週4-5回以上認められれば異常といえると考えられました。子どもの知的・情緒・行動面へのSASの影響については、現在解析中です。
128「幼少期にみられる摂食障害と神経発達の問題との関連について」
神経性やせ症などの摂食障害は主に思春期以降の女性に多く発症しますが、1990年代後半から小学生でも患者さんが出てくるなど、低年齢でもかかるケースが増え、小さい時からのサポートの重要性が高まってきました。しかし、小さい頃からの食べ方に関する傾向や、問題がある場合の原因について、世界的にもまだ詳しいことはわかっていません。この追加調査では、ヨーテボリ大学(スウェーデン)と高知大学の研究者が協力をして、スウェーデンと日本で同じ質問票調査を行っています。質問票は2018年12月に6533名の方に郵送され、2019年3月末時点で3556名の方にご回答いただきました。今後、お答えくださったお子さまの成長の記録をいただきながら、小さい頃からの様子との関連や日本とスウェーデンとの比較等の分析をしています。※2
※2 論文成果が出てきています。
「回避・制限性食物摂取症(ARFID)に関する保護者向け質問票の開発:4歳から7歳の日本人小児における初期検証と有病率 【エコチル調査の追加調査】」
「ARFID(回避・制限性植物摂取障害)スクリーニング陽性児の神経発達と臨床的特徴:日本の出生コホート研究【エコチル調査の追加調査】」
190「出産後から経年的な子育て環境の夫婦関係への影響について」
近年、わが国では出産する女性のうち4人に1人が35歳以上の高齢出産であり、20代女性と比較し体力の低下がある上に、核家族化、親の高齢化、親戚づきあいの疎遠等、妊娠・出産・育児へのサポートが得られにくくなっているという現状です。家族機能のほとんどを夫婦間で相互に補い合っていることが多い現在、家族関係の最小単位である夫婦関係が親密であることは、子どもを育成する時期において重要となることが報告されています。特に子育てに中心的役割を果たす母親の心身が危機的である状況は夫婦の危機であり、家族の危機に発展する高い可能性をはらんでいます。
子どもの成長に伴い目まぐるしく変化する日常において、様々な危機を乗り越えようとしている、夫婦関係の状況に着目し、夫婦関係の実態並びに出産からの経年的な子育ての環境と夫婦関係の関連を様々な角度からみていきます。
小学2年生対象の学童期検査(2019年10月~2021年2月)会場で回答いただいたアンケートとエコチル調査で得られた情報(子育て環境、子育てのサポート等)の関係性を分析しています。